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直腸脱とは直腸が肛門から脱出する病気です。
図1. 直腸脱
引用: 日本大腸肛門病学会ホームページ
直腸を固定している支持組織の緩みが原因です。粘膜だけの脱出なら不完全直腸脱(直腸粘膜脱)、直腸が全層で反転脱出すれば完全直腸脱と呼びます。男:女比率は約1:9で、高齢女性に多く平均年齢は約80歳です。若い患者様は精神疾患を有している場合がほとんどで、長時間トイレでいきむ傾向にあります。自覚がない場合は第三者(病院なら看護師さん、施設なら介護士さん)によって見つかることもあります。症状は排便異常、便失禁、尿失禁、脱出している直腸粘膜からの出血などです。
直腸脱は放っておいて悪くなることはあっても、自然に治る病気ではなく、手術が唯一の治療です。肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版では、並存疾患などから全身麻酔が可能ならお腹からの手術により、開腹または腹腔鏡下で緩んで下垂している直腸を引き上げて骨盤に固定する手術(直腸固定術)が勧められています。全身麻酔が不可能なら、肛門からの手術により、腰椎麻酔または局所麻酔で、脱出長が5cm以上なら肛門からの直腸切除術(Altemeier法)、脱出長が5cm未満なら直腸粘膜切除−筋層縫縮術(Delorme法)または粘膜豆絞り−肛門括約筋拘縮術(GMT法)が勧められています。
当院では、患者様の約9割に当たる脱出長5cm未満の直腸脱に対して、腰椎麻酔または局所麻酔での、Delorme法による手術を行っています。直腸粘膜を脱出長の2倍の長さまで切り取り、直腸粘膜下筋層を蛇腹状に縫い縮めて、粘膜同士を縫合します。
図2. Delorme法
引用: よくわかる骨盤臓器脱ホームページ
図3. Delorme法
引用: 北みやぎ外科クリニックホームページ
図4. Delorme法
引用: 高野病院ホームページ
術前検査は、外来で検尿、一般採血・凝固系採血・感染症採血、心電図、胸部腰椎レントゲンを撮り、入院後に大腸カメラをします。術後約7日目に退院可能ですので、基本入院期間は約13日間です。
脱出長5cm以上の症例に対しては、全身麻酔で直腸固定術のできる病院を紹介いたします。
後の再発率は当科のデータや文献報告などから、直腸固定術で5%、Altemeier法で16~30%、Delorme法で10%、GMT法で12.5%です。
2023年3月10日リビング姫路に当院の西田医師へのインタビューが掲載されました。